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介護と医療に関わるすべての人にむけた歯医者のブログ

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歯科医師の視点からみた”ゴックンの評価”。”むせ”からわかる対応手順。家族や施設で共有してほしい。

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先日こんなツイートをしたら少し反響があって、質問をいただいたりしたのでちょっとだけ詳しく書いてみますね。



テーマ:”むせ”の状態から適切な対応を見抜く。


高齢者や体の不自由な人が食事中にむせることがあります。


毎回むせてしまって食事が進まなかったり苦しくなってしまって食べなかったり、このような場面は日常茶飯事ですよね。


家族や介護するスタッフさんからすると、栄養をとる意味でも食べて欲しいんですけど、どうしていいか分からずに、結局とろみをつけたり食事の形態を柔らかくして対応することが多いと思います。


一律でとろみをつけたり食事の形態を変えていることも多い印象です。安全性を考えるととろみをつけて食事の形態を変えるということは正しいです。


そこに加えて”いつムセているのか””なにを食べるとムセているのか”それを見極めることはさらに安全性を高めることができます。


そして”むせの原因”を知ることが出来れば”対策”をとることができます。”対策”をとることができれば安全性もさらに向上しますよね。


本人や家族から食べたいものが提案されたときにも、原因を知っていれば対策がとることができます。リハビリや訓練のゴール設定の根拠のひとつにもなるはずです。


家族や施設のスタッフさんの食事介助の何かの役に立てれば嬉しいです。

想定読者:食事中にムセてしまう方の家族、その介護や医療に携わる人たち


体が不自由だったり高齢だったりする人の食事に関わる人たち。

具体的にはご家族はもちろんケアマネさんや介護職員さん、言語聴覚士さんや理学療法士さん栄養士さんの参考になれば。

注意点:本質を紹介しています


難しい専門用語はほぼ使っていません。


今日からすぐに観察できるような内容だったり実践できる内容を意識して、なるべく分かりやすく簡単に書いたつもりです。


とはいえ一応ゴックンの治療を専門とするの歯医者として根拠や今までの経験をもとに紹介しています。特に対策の部分では言語聴覚士さんが、栄養バランスや食事の形に関しては栄養士さんがスペシャリストです。


もし具体的な補足があれば指摘して頂けるとありがたいです。( Twitterが一番早いと思います)


あと時間のない人とか面倒くさいと思う人のために、目次から”まとめ”に飛んでもらうと全ての症状の原因と対策をまとめて掲載しています。


目次

いつむせている?【ポイントは3つ】

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ポイントは以下の3つです。

①飲んで”すぐ”むせる

②飲んで”しばらくたって”むせる

③食べることと”関係なく”むせる



最初にふたつだけ、”誤嚥(ごえん)””嚥下(えんげ)”という言葉を覚えてほしいです。


”誤嚥”とは、つばや食べ物、胃液などが気管に入ってしまうこと。

”嚥下”とは簡単にいうと”ゴックン”のことです。”モグモゴックン”の”ゴックン”。これだけです。


これからこの言葉たちはちょこちょこ出てきてしまうので、なんだ。ゴックンのことか、と思って読み進めて下さいね。



①飲んで”すぐ”むせる


飲んで”すぐ”むせることを嚥下前誤嚥といいます。


口に入れたものをゴックンする前にむせてしまうという状況です。


この原因は2つあります。


・ゴックンの反射の「遅延」や「喪失」

・口の中に食べ物を「保持」することができない


食べ物が喉に到達するスピードにゴックンのタイミングが合わないと、食べ物が喉の奥やその先にある気管に入ってしまい、むせてしまいます。


②飲んで”しばらくたって”むせる


飲んで”しばらくたって”むせることを嚥下後誤嚥といいます。


口に入れたものをゴックンした後、時間をおいてむせてしまっている状況です。


この原因は主に3つあります。


・多すぎるひと口量

・ゴックンのパワー不足

・パワーを必要とする食品の摂取



ゴックンした後も完全に飲み切れていないため、むせてしまいます。


③食べることと”関係なく”むせる


食べることと”関係なく”むせることを”唾液誤嚥””逆流後の誤嚥”といいます。


この原因は主に3つあります。

・ゴックンのパワーの低下により喉に唾が残ってしまっている

・のどの感覚が低下している

・胃や食道からの逆流




自分のつばでも誤嚥している状態なので、普段の日常でも寝てる間でさえ、むせてしまいます。

何を食べてむせている?

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①嚥下”前”誤嚥


嚥下前誤嚥の原因になりやすい食べ物は次の2つです。

・水分流れるスピードが速くまとまりにくいもの

・パラパラしていて、まとまりにくいもの


イメージとしてはのどにササっと落ちてしまったり、まとめたつもりなのにこぼれ落ちてしまって意図せずのどに落ちていってしまうような食べ物です。


少し難しい言葉でいうと”流動性の高い食品””凝集性の低い食品”です。


具体的に挙げておきますね。

【嚥下”前”誤嚥の原因になりやすい食べ物】

・水
・水
・果物
・クッキー
・煮大根
・水
・水
・水!


②嚥下”後”誤嚥


嚥下後誤嚥の原因になりやすい食べ物は次の3つです。

・くっつきやすいもの

・形が変わりにくいもの

・まとまりにくいもの




イメージとしては喉にくっつきやすかったり、ベタベタしていたり、後はこんにゃくのような形が変わりにくいような食べ物です。


嚥下前誤嚥と同じでまとまりにくいものも原因となります。


少し難しい言葉でいうと”粘度の高い食品””付着性の高い食品”あとは嚥下前誤嚥でもでてきた”凝集性の低い食品”です。



こちらも具体的な食べ物をあげておきますね

【嚥下”後”誤嚥の原因になりやすい食べ物】

・肉
・のり
・寿司
・ご飯
・お餅
・そぼろ
・おにぎり
・こんにゃく
・チャーハン

③唾液誤嚥や逆流後の誤嚥


この場合は具体的な食べ物というより、自分のつばや胃や食道から食べ物が逆流することで起こります。


実践的な対応

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①”嚥下前誤嚥”への対応


口の中の食べ物の動きを調整することが大切です。

・とろみ剤の使用:ゆっくり動きまとまりのある形にするこれにより流動性を下げて凝集性を上げます。

・嚥下を活性化させる:アイスマッサージのような嚥下促通訓練で嚥下の反射を活発化させることは有効です。

・姿勢の調整:特に顎を引くのは有効で口の中に食べ物の保持しやすくします。タイミングを取りやすくなる効果もあります。

・食事に集中できる環境づくり:食べることに集中する環境作りをします。テーブルを離すとかテレビをつけないとか他に注意が向かないように嚥下の意識化しましょう。

   


②”嚥下後誤嚥”への対応


口の中や喉に食べ物が残らないようにすることが大切です。

・顎引き嚥下: 強い力で飲めるようになります。

・食形態の変更:弱い力でも飲めるように食べ物の形を変更します。

・ひと口量の調整:口や喉に食べ物が残りにくいように一口の量を少なくします。

・食事のペースの調整:あまり早く詰め込みすぎてしまうと誤嚥だけではなく窒息の原因となります。
・嚥下を複数回行う:これも喉にいい食べ物は残らないように1度ではなく何回かゴックンしてもらいます。



③”唾液誤嚥”、”逆流後の誤嚥”への対応


唾が口やのどの中に残らないようにすることが大切です。


・就寝時の姿勢の工夫 :横向きで寝るほうが安全です

・空嚥下(からえんげ)を促す:口の中に食べ物がなくてもゴックンしてもらいましょう。

・お腹の圧迫をしない:食べ物の逆流防止になります。

・食後座ったままにする:食べ物の逆流防止にあります。

・満腹にしない:満腹にしてしまうとその名の通り食べ物が戻ってきてしまいます。

・食べ物に気をつける:油っぽいものコーヒーチョコレートこのあたりが逆流しやすい食べ物です 。

とろみについて

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今はとろみ剤がすごく優秀で以前と比べて本当に2倍くらいの精度になったんじゃないかなと思ってます。


基本的には30秒まぜて3分待つのが基本です。


とろみって実は一長一短があります。ツイートしているので参考にしてください。


この通り、食品をまとまりやすくなるように、口や喉の中でばらつかないようにするっていう効果。


ゆっくりと喉に流れ落ちるからごっくんの話が間に合うようになるタイミングが合うようになるっていう効果。


その一方で喉に残りやすくなったり、飲み込むのに強い力が必要になっってしまう作用もあります。


ですので、とろみをつけすぎると逆に”嚥下困難食”になってしまうので注意が必要です。


そのためには適切な量を適当適切な時間混ぜることが大切です。


そうすることで、とろみが安定した状態で食事することができます。



忙しいと適当な量を入れて適当にガチャガチャって混ぜたくなるんですけど、 後々のことを考えると適切に作っておいた方が食事がスムーズに進むと思います。


ちょっとでも早くとろみをつけたければも”早く混ぜる”か”温度を高くする”は有効です。


ほんの少しだけよく混ぜるだけで、とろみの安定性はグッと高まります。


あと、どうしてもとろみをつけたい場合には”2度混ぜ法”とよばれる、”混ぜてから15分待ってとろみを加えて、混ぜる”という裏技的なやり方もあります。


ですがこれは時間がかかってしまうのであまり現実的ではないかもしれません。




まとめ

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介護に携わる家族や施設のスタッフさんは正直多忙で、特に施設の場合は人数的にもマンツーマンでついて食事を指導したり観察するということが難しいです。


そのため”ながら”でできて”効果的”で”効率的”な方法が一番実践しやすいのでは?と感じていつも診療しています


直接食事介助しなくても促しだけで反応してくれる人達もいます。


限られた時間の中で比較的実行しやすいものを紹介してみましたので、家族や施設で共有してもらえると嬉しいです。

最後に原因と対策を再度掲載しておきますね。

【飲んですぐむせる(嚥下前誤嚥)】

原因

・水分流れるスピードが速くまとまりにくいもの

・パラパラしていて、まとまりにくいもの

【嚥下”前”誤嚥の原因になりやすい食べ物】

・水
・水
・果物
・クッキー
・煮大根
・水
・水
・水!

対策

・とろみ剤の使用:ゆっくり動きまとまりのある形にするこれにより流動性を下げて凝集性を上げます。

・嚥下を活性化させる:アイスマッサージのような嚥下促通訓練で嚥下の反射を活発化させることは有効です。

・姿勢の調整:特に顎を引くのは有効で口の中に食べ物の保持しやすくします。タイミングを取りやすくなる効果もあります。

・食事に集中できる環境づくり:食べることに集中する環境作りをします。テーブルを離すとかテレビをつけないとか他に注意が向かないように嚥下の意識化しましょう。


【飲んでしばらくしてむせる(嚥下後誤嚥)】

原因

・くっつきやすいもの

・形が変わりにくいもの

・まとまりにくいもの

【嚥下”後”誤嚥の原因になりやすい食べ物】

・肉
・のり
・寿司
・ご飯
・お餅
・そぼろ
・おにぎり
・こんにゃく
・チャーハン

対策
・顎引き嚥下: 強い力で飲めるようになります。

・食形態の変更:弱い力でも飲めるように食べ物の形を変更します。

・ひと口量の調整:口や喉に食べ物が残りにくいように一口の量を少なくします。

・食事のペースの調整:あまり早く詰め込みすぎてしまうと誤嚥だけではなく窒息の原因となります。
・嚥下を複数回行う:これも喉にいい食べ物は残らないように1度ではなく何回かゴックンしてもらいます。


【食べることと”関係なく”むせる(唾液誤嚥、逆流後の誤嚥)】

原因

・ゴックンのパワーの低下により喉に唾が残ってしまっている

・のどの感覚が低下している

・胃や食道からの逆流

対策
・就寝時の姿勢の工夫 :横向きで寝るほうが安全です

・空嚥下(からえんげ)を促す:口の中に食べ物がなくてもゴックンしてもらいましょう。

・お腹の圧迫をしない:食べ物の逆流防止になります。

・食後座ったままにする:食べ物の逆流防止になります。

・満腹にしない:満腹にしてしまうとその名の通り食べ物が戻ってきてしまいます。

・食べ物に気をつける:油っぽいものコーヒーチョコレートこのあたりが逆流しやすい食べ物です 。



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