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【歯科衛生士向け】訪問歯科の仕事内容をわかりやすく解説【業務内容はほぼ書類】

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訪問歯科の仕事内容を知りたい歯科衛生士さんへ。



・訪問歯科に興味があるけれど、仕事内容がよくわからない。


・もし訪問歯科で働くとしたら、事前に気をつけておくことはあるのかな。


こういった疑問に答えていきます。


■本記事の内容


この記事を書いているボクは歯科医師です。歯科医師になってから10年以上ほぼ毎日、介護施設や精神病院、急性期病院、個人宅を訪問しつつ、大学で”高齢者の歯科治療”を教えています。


これまで50以上の医療機関と関わらせていただきまして、100人以上の衛生士さんと一緒にお仕事してきました。


Twitterで情報発信しています。記事の信頼性担保につながれば嬉しいです。

『もし家族を介護することになったら"すぐにプロを頼る"…というのは覚えていてほしいな。
経験上、在宅の介護で苦労するのは家事、入浴、排泄。すべて親族だけで担おうとすると心身がすりへり、自分の美容院どころか病院すらいく余裕がなくなる。プロに頼って。そのために介護保険を毎月払ってるんだ』



【訪問歯科】衛生士の仕事内容 4つ

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✔︎ 【訪問歯科】衛生士の仕事内容 4つ


①:口腔ケア


②:診療アシスト


③: 患者さんの家族やケアマネージャーとの業務連絡


④:書類作成・記入


上記のとおりです。


そもそも訪問歯科とは


訪問歯科とは、身体的、精神的な理由で歯医者に通院が困難な人のために、自宅や施設にいながら歯科診療が受けられる医療サービスです。


歯医者や歯科衛生士が自宅や介護施設に直接訪問して治療します。高齢化が急速にすすむ日本で、国が促進している制度のひとつです。


詳しくは【訪問歯科とは..?】訪問歯科診療とは何者なのかを解説します【聞き慣れない】で解説しています。


「出張歯医者」「走る歯医者」のようなイメージです。


【訪問歯科の1日】業務の流れ


はじめに全体を知ることで、細かいところも見えやすいと思いますので、簡単に1日の流れを紹介しておきます。


病院へ出勤

器材の準備

出発(先生と待ち合わせ)

診療×(件数)

帰院

片付け・書類記入




これが1日の大きな流れです。「どこに」「誰と」「何件くらい」訪問するのか、病院によって少し違いますが、大きな流れは変わりません。


診療が始まるまでに移動や準備があり、帰った後は片付けに加えて書類の記入や整理がある。これが訪問歯科の特徴です。


先生との待ち合わせ場所も病院のこともあれば、駅で集合することもあります。


運転する人もコーディネーターさんがいたり、衛生士さんが自ら運転したり様々です。


訪問する場所は「介護施設」か「個人のお宅」のどちらかがほとんどですが、まれに「精神病院」や「障害者施設」のこともあります。


記入する書類は基本的に形式が決まっているのでそれに準じて記載していきます。


病院によっては訪問診療から戻った後に外来診療を行うクリニックもあります。


基本的なやり方は病院によって確立されているので、やる仕事は決まっていることが多いです。


【訪問歯科】衛生士の仕事内容①:口腔ケア


訪問歯科診療の主役は歯科衛生士さんです。訪問歯科では、患者さんへの口腔ケアがとても大きな意味を持ちます。


>>参考:【効果と目的】「口腔ケアとは?」口腔ケアが必要な理由をピンポイントで書いてみた


訪問歯科診療の対象となる患者さんは、高齢だったり、認知症だったり、寝たきりだったり、障害を持っていたりする人です。


このような患者さんは自分自身で口の中をきれいにすることが難しく、つねに虫歯や歯周病になりやすい環境にさらされています。


それだけではなく、筋力が衰えたり、飲み込むことや話すことが困難になる人も多いです。


そのため口の中の衛生状態を整えるだけではなく、筋肉など機能的なリハビリを行う口腔ケアは必要不可欠です。


あわせて、嚥下訓練のような機能訓練をおこなうこともあります。


まだ歯科では一般的ではありませんが、嚥下は今後、必須な分野です。


【訪問歯科】衛生士の仕事内容②:診療アシスト


外来と同じように、診療アシストもおこないます。


訪問歯科でも通常の治療をおこなう(虫歯を削る・入れ歯を作る・歯を抜く)ため、道具の準備や片付けなど、通常の衛生士の業務もおこないます。


場所や時間が限られるので、先生と連携しつつ円滑に進めます。


参考に具体的な診療項目も紹介しておきます。


・抜歯
・虫歯治療
・根管治療
・歯周病治療
・クラウンブリッジ
・義歯の調整・修理・作製
・口腔ケア
・摂食嚥下


ただこのときにも、事前に口の中をきれいにする必要があり、口腔ケアは欠かせません。


【訪問歯科】衛生士の仕事内容③: 患者さんの家族やケアマネージャーとの業務連絡


口腔ケアと同じくらい大切な仕事の一つが、患者さんの家族やケアマネさんとのやりとりです。


ケアマネージャー(介護支援専門員とも呼ばれケアマネと略されることが多い)とは介護の必要な方、その家族から相談を受け、介護サービス提供や自治体との連絡や調整をおこなうお仕事をしている方です。


介護や医療に関して、患者さんの一番近くにいるスペシャリストです。


患者さん本人とは意思の疎通が難しいことも多く、歯科治療の内容や計画を患者さんだけではなくケアマネさんと共有することでスムーズに診療することができます。


また、患者さんの家族との情報共有もおこないます。


患者さんごとに一人、キーパーソンと呼ばれる患者さん側の連絡窓口を決めておくとよいでしょう(娘さん、息子さんなど)。


介護施設で診療する場合には、施設を担当しているケアマネさん経由で連絡をとることになります。


具体的な内容としては「処置内容の説明」「次回の予定」「今後の治療計画」「診療費の回収」です。


こちらから情報を提供するだけでなく、家族やケアマネさんからの情報をもらえる関係性を築いておくことは、訪問歯科診療において重要です。


最初は緊張しますが、先生や周りのスタッフさんがヘルプしてくれます。


あと、世の中には色んな人がいるんだなーと実感できるチャンスととらえると、うまくいきます。


【訪問歯科】衛生士の仕事内容④:書類作成・記入


書類の多さは訪問歯科診療の特徴です。想像しているより10倍は多いです。


具体的には、患者さんや家族に向けた指導書や報告書、アセスメントを記入します。


検診をした場合は、検診表や検診結果をまとめる作業もあります。


患者さんだけでなくケアマネージャー、行政に向けて記録を残しておく必要があるため、書類は膨大です。


診療が終わった後、道具の片付けや準備にくわえておこなうことも多いです。


外来診療に比べ圧倒的に書類を書くことに時間を費やします。


パソコンで打ち込むと目や肩が痛くなるし、 手書きの場合は腱鞘炎になりかけます。


効率的におこなうやり方を試行錯誤しながら、だんだんと時間を短縮していきましょう。


訪問歯科で働く前に知っておきたい重要なこと

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訪問は外来の「出前」ではない


訪問診療は外来のイメージのまま、施設や個人の家でおこなうものではありません。


患者さんは必ず持病を持っています。そのため一人ひとりに合わせて安全を第一に診療を進める必要があります。


口が開かない、暴力を振るなどは日常茶飯時で、その日の状態によっても大きく左右されます。


診療内容や診療時間をその都度考え、実行します。


治療ができて当たり前の外来診療とは大きく異なりますよね。


そのため、決めたことをやらなければいけないと気負うスタンスではなく、「なんとかなる」「無理なら次回」のような柔軟な対応をすると良いと思います。


コミュニケーションは大切。メリットしかない。


訪問診療チーム内でのコミュニケーションは大切です。訪問診療のチームは先生を含め2人から3人のことがほとんどで、1日の大半を同じメンバーで過ごします。


移動は車内の密閉空間です。控えめにいっても、雰囲気が悪いと地獄です。


もちろん誰とでも仲良くしようということではありません。人との会話が苦手な人もいますし、寡黙な人もいます。


ですので、お互いを尊重して仕事をする気持ちを持つということが重要です。


これは先ほども書いた、家族やケアマネさん と接する時にも同様です。患者さん本人は診療内容などを覚えていないことも多いので、 周りで介護に携わる人たちへの十分な説明は信頼関係を築く上でも必須です。


また家族やケアマネさんは患者さんについての色々な情報を持っていて、そういう情報は診療する上で非常に役に立ちます。


今日はちょっとおしゃべりが多いとか、最近食欲がないとか、3日前に熱が出たとか、患者さんの体調や精神状態を知ることは、自分を救うための情報になります。


上手にコミュニケーションをとる必要はありません。


相手をリスペクトしながら、情報を共有したいという気持ちを持って相手とお話しするだけで大丈夫です。


当然、世の中にはどうしても合わない人もいるので、そういうときは逃げるが勝ち(転職)です。自分の心と身体を最優先に考えてくださいね。


【重要】自分の心と腰のケア


自分の身体のメンテナンスには気を配りましょう。特に「腰」と「心」のケアは大切にしてください。


患者さんは寝たきりのことが多く、 診療する体勢が自分の腰に負担のかかることも多いです。


中腰が続くと、腰にかなり負担をかけます。


痛みや違和感のない状態で、事前にケアしておくのは重要です。コルセットをまくなど、自分なりの方法を見つけておきましょう。


マッサージやストレッチはおすすめです。


あともうひとつ、「心」のケアも怠らないようにしてください。仕事の内容で行き詰まったり、人間関係で行き詰まったりすることは訪問診療に限らず、働いていると起こり得ることです。


特に、責任感が強い人は頑張りすぎてしまう傾向があって、必死で我慢して耐えることがあります。


解決できる問題ならばいいですが、もしどうしても駄目だと思った場合は、早めに見切りをつけることも大切です。


繰り返しになりますが、自分の身体を最優先にしてくださいね。


>>参考:【しんどい..】職場の人間関係がつらい歯科衛生士さんへ【シンプルな解決法】

 

※余談ですが、訪問歯科診療始めると体重が増加しやすいです。移動中、 どうしても間食を取りたくなってしまいます。


そのため低カロリーのおやつをピックアップしておくとよいと思います。むき栗とかさきいかとかオススメです。アイスは30°越えの日のご褒美にしましょう。


【価値観を大切に】自分の希望条件を確認。


働く上で事前に、自分の価値観を確認しておきましょう。これはそのまま希望条件になります。


当たり前の話ですが、条件の整った環境で働くことはとても大切です、


具体的に、以下のことは確認しておきましょう。


・給料
・休日
・勤務時間
・通勤の時間
・残業の有無
・勉強会の有無
・正社員(社会保険)
・有給、産休の有無
・スタッフの年齢層
・未経験、ブランクOK
・ネイルOK


こういった中から「優先事項」を決めておくと、自分にあった環境がみつかりやすいです。


支払い日、契約書の有無、契約期間と試用期間、スタッフの年齢層なども補足として事前に知っておくと、気がラクです。


自分の勤務条件に不安があると仕事も集中できません。 診療に集中する環境を作るためにも確認しておきましょう。


歯科衛生士向けの求人サイトを利用すると、条件に合わせて検索することができます。


訪問歯科の転職に強い求人サイトは【衛生士の転職】訪問歯科に強い求人サイト3選【未経験でも需要あり】で解説しています。


どの求人サイトを使うにしても、焦らず、妥協せずを意識してみてください。まず最初は「見学」をしてみることをオススメします。


まとめ:「訪問歯科衛生士」の仕事は魅力的で、やりがいのある仕事

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今回の記事のポイントをまとめておきます。



・仕事内容は主に4つ。「口腔ケア」「診療補助」「家族やケアマネさんへの連絡」「書類記入」


・仕事に関わる人たちへのリスペクトが大切


・自分を最優先。身体と心のケアを忘れずに


・自分の希望条件に合った病院で働く

 

患者さんに"寄り添う気持ち"が一番大切ですので、心優しい衛生士さんや物静かな衛生士さんこそ活躍できる場所です。


スキルや経験は関係ありません。 みんな最初は初心者です。訪問歯科診療に正解はないので、試行錯誤しつつ改善していきましょう。


「チャレンジしたこと」と「経験したこと」はかならず自分の財産になります。


繰り返しになりますが、訪問歯科の診療の対象となる人たちは高齢だったり、体が不自由だったり、認知症を患っていたり、 通院することが難しい人ばかりです。


これからはこのような患者さんは増えてきますので、訪問歯科に興味がある衛生士さんはぜひ一度チャレンジしてほしいです。


今回は以上です。


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